『干鱈』

 

R7.2.28
干鱈嚙む憂鬱に似た海のいろ
          碧西里

干鱈噛む海風強き村の端
          栗田すずさん

順調に老いゆく指や干鱈割く
          ばばばあちゃん

投稿のラジオ干鱈を焼く手止め
          おこそとの

くちびるのけがにひだらがしよつぱすぎ
          ひびきX

風吹いて干鱈の揺れて金なくて
          岡田きなこ

生きるには少しの野心干鱈噛む
          窪田ゆふ

求職や干鱈を噛んで味のする
          二重格子

配給は干鱈毎日ひだらと母
          高原としなり

家系譜に載らぬ曾祖母干鱈噛む
          七瀬ゆきこ

樺太に祖父の系譜や干鱈さく
          はぐれ杤餅

能登を風しほのつぶ立つ干鱈かな
          トウ甘藻

マッコリは月の甘みや干鱈裂く
          久森ぎんう

干鱈掬うスープの底の祖国かな
          沢胡桃

干鱈割くつひに日本を出ぬ人生
          木ぼこやしき

R7.3.7
塩を抜く干鱈の誇り折らぬやう
          庭の蛍草

百本の干鱈の堤がる暗き蔵
          富士山

干鱈焼く火は外海の吠える音
          森毬子

干し鱈や若狭の寺に人多し
          清水縞午

干鱈来る山には山の祝事
          なかしまこんのこ

棒鱈を戻す再婚てふ縁
          川端こうせゐ

縁は切りたし干鱈は塩の抜け難し
          凡鑽

鬱王と名付けて干鱈叩き割る
          伊藤映雪

顔のない干鱈と顔のある干鱈
          柊琴乃

干鱈てふ全裸より裸な覚悟
          赤目作

干鱈噛む承認欲求はくさい
          公木正

干鱈裂く吾に由一の画才なし
          沼野大統領

干鱈毟る啄木の詩は生臭い
          樹海ソース

生き恥は鹹し干鱈を湯にもどす
          押見げばげば

『天』
干鱈打つ海風干鱈より重し
          夏椿咲く

酒に干鱈あゝ嚙み合わぬ結婚観

          イサク

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