『鰡』

 



 『鰡』

R4.9.30

鰡を待つ櫓へ日がな雲の影

          樋口滑瓢

上げ潮や舳先に割るる鰡の群れ

          竹田むべ

太陽のほくろ数多や鰡跳ばす

          水鏡新

鰡が跳ぶ太陽に鰓炙られて

          詠頃

鰡跳んで腸少し移動する

          ゆうひ

空へ鰡突つ込む海へ戻さるる

          ありあり

沈む泥被りて鰡の腹きれい

          さくさく作物

鰡跳ねて尻無川の空昏し

          中岡秀次

大阪は商人(あきんど)の街鰡跳ぬる

          スリーピー

鰡の臭い堤防を越え式場へ

          ギル

鯔の吐く音はアルミの匂いして

          唐草もみじ

算数のテスト破いた鰡跳んだ

          パンの木

鰡提げてみちのく匂う雨を帰る

          稲畑とりこ

びしよ濡れが聖剣のごと捧ぐ鰡

          北野きのこ

R4.10.7

鰡の群れ眺むる人に加はりぬ

          川岸輪子

鰡は外道そんな綺麗な目をしても

          いかちゃん

鰡の顔間近や青年期の終わり

          吉行直人

鰡跳ねる喝采のごと嗤うごと

          めぐみの樹

栄転と囃されて噛む鰡の臍

          仁和田永

鰡は溢れて地銀取り付け騒ぎ

          亘航希

鰡跳ぶや川は終局の匂ひ

          山内彩月

河臭赤黒しや鰡の首を出刃

          でんそ

川はヒトを赦し続けた鰡吐いた

          穂積天玲

歪みなき月を眼に鰡跳ねる

          なおき

鰡の顎しゃくらせ山幸彦の針

          七瀬ゆきこ

わだつみの我楽多として跳ねる鯔

          世良日守

海神の吐きし光を鰡と呼ぶ

          ひそか

鰡跳ねて三百年後ここで会おう

          春巻くるん

『天』

鰡飛んで恍惚の腹より落ちぬ

          はんばぁぐ

 

教え:季重なりについて(10.4 談)

「月」は他の季語を許容し且つ少し後ろに引いてくれる。では、どこら辺から季重なりの臭いが消えていくか。

・鰡跳んで月光の中美しく  たけのこの里紫陽花

評:美しくとまで言うとまだ少し月光が強い

・月向けて跳ぶ鰡の影見上げるは誰そ  いちかぱっぱ

評:下五のリズムが崩れているため鰡が立ってきにくい

・鰡跳ねる水面に映す月の顔  ペペロンチーノ

評:最後に月の顔が残るため語順の問題で損をしている

・月映る水面飲込む鰡の群れ  とやのとりやのん

評:最後にチョンと鰡の群れが来るので、まだ月の分量の方が多い

・波立ぬ月下に跳ねる鰡太し  はなみずき

評:鰡が太いとまで描写するので、ここまでくると鰡の方が強くなり水曜日の合格ライン

・鰡閃く純銀製の二日月  津島野イリス

評:二日月の方は比喩になっており、よく考えられたバランスで水曜日クラス

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