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『鰶』

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  R8.10.23 身に余らぬ幸せ鰶の小骨           つまりの 骨切りの無音小肌を酢に放つ           ふなべたま 金の酢へ銀のこのしろ沈めをり           杏乃みずな 夜を酢締めすれば銀色鰶剥ぐ           澤村DAZZA 甘酢てふ光へ白む小肌かな           せんとう一波 鰶のこの断面の真正直           海色のの やわらかい酢に鰶が晴れている           柿司十六 鰶にたんと酢を遣る頭屋かな           藤白真語 鰶を腹ごと断てよ吾を褒めよ           十八公 明日から主任鰶を焼いてみた           芦田葉月 鰶に骨神童でいたかつた           深山むらさき 戦禍のニュースに馴れてこのしろ甘酸つぱ           霧賀内蔵 戦争がそこにある鰶を焼く           イサク R8.10.30 このしろや民話のやうに飯盛つて           多々良海月 鰶やいつ来ても東京に人           里山子 この酒は夫にこの酢は鰶に           よしとんこ 鰶や酒をひかりと呼び父は           恵勇 祝詞なるひかりを抱へ鰶は           樹海ソース 鰶や酢の香に消ゆる海のいろ           でんでん琴女 鰶や少年海に老い易く           木染湧水 世に慣れすぎました鰶に小骨           白圭 鰶焼く夜の花瓶の水饐えて           伊藤映雪 鰶の小骨うるさし花眼また           高尾一叶 このしろや小骨の刺さる小ぜりあひ           沖庭ノ華風 鰶すこい播磨の神は喧嘩好き           押見げばげば 鰶や小骨も恋も酔いの邪魔           立田鯊夢 鰶や葬儀の後に聞くのろけ           あみま 『天』 のびしろがのびないこのしろがでかい           海原夏帆

『衣被』

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  R8.10.9 衣被皮の全きあつけなき           加納ざくろ 衣被指でつまみてつぶれけり           文六 衣被つまんで思考停止中           亘航希 貰うにはでかい家なり衣被           帝菜 衣被平らげ妻の家しずか           宮本モンヌ 衣被父と縁なき暮らしかな           せんとう一波 とはいへど長寿の手相衣被           高尾一叶 衣被ふきふき遠山裁きかな           西川由野 衣被小兵力士の力瘤           如月ぎぎる 跡継ぎの坊さん寄りて衣被           竹内番菜 老いらくの煩悩するん衣被           梅うめ子 母へ果報のみを衣被へ味噌を           一斤染乃 衣被つるりと月の裏返る           広島じょーかーず R8.10.16 人生は初めてづくし衣被           中岡秀次 衣被買つて五年の塩を振る           十八公 衣被ころり教師を辞めた夜           クラウド坂の上 台拭きに酒匂ひけり衣被           山本先生 衣被とうるんと軽き倦怠期           はぐれ杤餅 すっぴんに戻る晩年きぬかつぎ           沖庭乃剛也 葬儀屋のチラシ四つ折り衣被           恩田堤防 衣被はふはふあたし社畜でいい           浅海あさり 衣被ふつうに明日のくるくらし           すまいるそら 衣被未来に触れた手が痒い           髙田祥聖 生きるにも死ぬにも覚悟衣被           川越羽流 来世また出たとこ勝負衣被           仁和田永 『天』 衣被私の中にヒダル神           にゃん

『爽やか』

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  R8.9.25 爽かや風にすっぴんまかせゐる           井納蒼求 爽やかの爽やかならぬ爽の文字           城倉水山 爽やかな朝は朝だが八つ当たり           和脩志 爽やかにみづを讃へてゐる便器           髙田祥聖 竹ぽつくりぽくぽく爽かな乾き           西川由野 爽やかや風を含みし無垢の椅子           まさかわそう 爽やかや木々と語らふための椅子           いかちゃん よそもののわたし小川がさわやかです           石川穴空 風さやかすつくと首のばすボルゾイ           正念亭若知古 爽やかや無職へひかる潦           葦屋蛙城 にごり酢のあまやか愚陀佛庵さやか           岬ぷるうと 爽やかや空心菜の穴覗く           うさぎやいわじろう 風呂敷へ爽かだけを相続す           天宮ほたて 爽やかに野垂れ死ぬかもなんて歌           湯屋ゆうや R8.10.2 爽やかに熊鈴ひゆんと脇を過ぐ           江口朔太郎 爽やかや脇は画板をはさむとこ           桜鯛みわ 爽やかに火起こす課外授業かな           藤白真語 爽かな校庭二日目の生理           天雅 爽やかの間の爽やかでない日           穂積天玲 トラックを降りて爽やかへと伸びを           ヒマラヤで平謝り 爽やかな古道にJAFを待つてゐる           古賀 爽かやケーブルカーの好きな斜度           七瀬ゆきこ 枕木にひとつひとつの影さやか            藻玖珠 船団めく雲どのそこも爽やかに           黒子 はにわさはやか人は腐敗をくりかへし           ギル 骨だけとなればさやけきひかりかな           ひそか 爽やかにくぐるシンジャンティタンの尾           深山むらさき 『天』 爽やかや詩集の中を鳥百羽           明日ぱらこ

テーマ『愚陀佛庵』

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  R8.9.11 百年の原稿の朱のくすみ夏           ひでやん 遺稿繰る指や階下の百日紅           すまいるそら 活けて詩となりゆく桔梗みづみづし           海原夏帆 きちこうや子規さんのこゑ猫のこゑ           巴里乃嬬 下宿代あげます竜田姫ゐます           宵嵐 愚陀佛庵の窓は涼しき月を飼ふ           樹海ソース 天金のこゝろへ窓の月涼し           木ぼこやしき 天金は豊かに古び月の秋           にゃん ペン置きの鰐の蘊蓄夜の秋           靫草子 筆置きの龍の黒錆初嵐           樫の木 文かはすやうに暮らせり草の花           横縞 肘ついて菊描く友よ秋灯           浅海あさり 柿食らふ呼べば応ふる朋とゐて           ろまねす子 ひじ掛け窓に柿食ふ二人愚陀佛庵           二城ひかる R8.9.18 再建といふ新涼のやうなもの           梅うめ子 通り土間抜けて庵へ桑の風           小笹いのり 子規の下駄漱石の靴虫集く           佐藤儒艮 夜長かな漱石の灯と子規の灯と           桜鯛みわ 猫柳揺れ吾輩は友である           蜘蛛野澄香 友への妬心水蜜桃の産毛ほど           髙田祥聖 文学論果てて夜長の腕相撲           ほしのり 子規いるやこんなに秋の澄む夜は           家守らびすけ 秋の風きみらをpioneerと訳す           イサク 筆止めてこゑきざはしに月きれい           和脩志 律の風階下に子規のこゑ絶えて           竹田むべ 身に沁むや下りれば子規のをらぬ部屋           赤味噌代 『天』 柿ほどな小さき家にまた棲まん           沼野大統領

『星月夜』

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  R8.8.28 星月夜二十八階など地上           鈴白菜実 母眠らせ夜食はすうぷ星月夜           村木年子 流産はすつぱいにほひ星月夜           林廉子 匂ひ濃く蜥蜴の骸星月夜           彩雲 星月夜まだ産まれざる牛の脚           河埜スミヰ くるぶしはまづしきくわじつほしづくよ           古賀 帆のやうな短章一つ星月夜           のんきち 星月夜砂丘の端の研究所           ろまねす子 しづもれる地下廃棄物ほしづくよ           冬のおこじょ ほしづくよ千年前は怒る山           すりいぴい 火口湖のみづはしづもり星月夜           みやま千樹 星月夜が湖に産卵しています           一斤染乃 鳥葬りしポポラスそよぐ星月夜           桃山直 シーシャ吸っては星月夜へ吐いて           鳥田政宗 R8.9.4 星月夜今日から知らない人の家           明日ぱらこ 停電戸数一千五百星月夜           みつ豆 星月夜ことばが祈りだった頃           茶々琴子 画家は死を空へ沈める星月夜           青海也緒 星月夜削ぎたる耳を欹てて           小型犬の夫 オカリナの穴は星月夜のたまご           たーとるQ 星月夜渫ふマンタの百の群れ           桜鯛みわ 嘶きは大河と交ひ星月夜           池之端モルト 星月夜象の背中で眠る月           つとむくん あの啼鳥は邪鬼星月夜ですから           江口朔太郎 星月夜めくればただのがらんだう           広島じょーかーず 『天』 ナスカにはゐぬはずの鳥星月夜           仁和田永

『俳句甲子園』(2026)

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R8.8.14 咲くやうに円陣俳句甲子園           一走人 俳句甲子園発熱器官たる我等           北野きのこ 俳句甲子園エースは針のやうに立ち           古瀬まさあき 俳句甲子園鏨の舌で刺す急所           沼野大統領 堂々と震える語尾や俳句甲子園           ほしのり 俳句甲子園出し切るマイクの酸欠           風早杏 磨かれし助詞は守護神俳句甲子園           なしむらなし ひらがなはつよくてきれい俳句甲子園           古賀 俳句甲子園赫は痛みの赫なんです           常幸龍BCAD 俳句甲子園声たふみづを詩にあたへ           藤白真語 修辞とは十色の闘志俳句甲子園           丁鼻トゥエルブ 全方位花鳥風月俳句甲子園           葦屋蛙城 俳句甲子園みな清やかな子規の裔           にゃん R8.8.21 俳句甲子園一斉の挙手迎え撃つ           海色のの 俳句甲子園いま覚醒の一年生           叶安 俳句甲子園ワタナベ君が四人ゐる           或人 俳句甲子園この恋は作中主体           山本先生 反戦句ぶつかる俳句甲子園           平良嘉列乙 母校対好きな句俳句甲子園           宇都宮駿介 引率のガッツ小さく俳句甲子園           さおきち 俳句甲子園かつて次鋒の顧問の眼           小林浮草 俳句甲子園顧問の長き長き礼           麦のパパ 俳句甲子園未完の詩を羽化させむ           津島野イリス 俳句甲子園羽化か発火か沈黙か           熊の谷のまさる 詩は疾うに気体だ俳句甲子園           押見げばげば 『天』 俳句甲子園大街道は風の筒           杏乃みずな 俳句甲子園敗れし夜も詩は生まれ           河埜スミヰ

漢字シリーズ『熱』

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  R8.7.30 空母めくサンダルひらめ筋に熱           内田ゆの どこか醒めた熱どこに行こうか夏           うめやえのきだけ 熱のない会話ハンディ―ファン熱風           梅うめ子 サーモグラフィ空蝉は熱を抱く           吉行直人 空蝉を脱いで余熱に濡れてをる           元野おぺら 鳥の胃につまる毛虫の熱量値           花椰菜 杏子やがて孵化しさうなる熱りかな           ひそか 一葉忌鏡は甘く発熱す           那乃コタス 負馬のしばらく風に逃す熱           ギル 負馬の銜の余熱を拭きにけり           いかちゃん 戦争は過熱バナナの背地性           桜鯛みわ 泰山木咲いてこの世に熱置いて           伊藤柚良 汝を愛す狐火ほどの熱量で           青田奈央 R8.8.7 炎熱や影に押されて夫戻る           水須ぽっぽ ひらひらと昼の余熱となる金魚           ちべた店長 金魚なら死ぬ熱明け方の微熱           栗平紗江 知恵熱のやうな西日の中にゐる           池之端モルト 明日も暑そう蠍座の尾が熱い           越智空子 停電だし熱帯夜だし霊居るし           江口朔太郎 熱帯夜ねむるちからもないからだ           木ぼこやしき 熱愛の記事よく燃えてさつまいも           蜘蛛野澄香 熱い方の湯は誰もゐず今日の月           高橋寅次 気化熱に奪はれ月の蒼くなる           はぐれ杤餅 蟋蟀の匂ひや地熱発電所           麦仙人 熱燗や九州説の分が悪い           ⑦パパ 笠智衆いさうな店の燗熱し           彩汀 『天』 さみしさの芯は熱性百合匂ふ           すまいるそら 唯一の熱源として枯野行く           多々良海月