『初夏』

 

R7.5.9
はつなつの雲は芯からひかりだす
          越智空子

りゆんりゆんと光るよ初夏の山彦は
          にゃん

ペダルかららん初夏の日暮れの始まりは
          細井昴

初夏の風ほら桟橋に潜水艦
          木染湧水

初夏や卵化石めくガスタンク
          林廉子

初夏の午後板書のチョークレモン色
          つまりの

ふる里は開放弦の初夏の空
          小川さゆみ

東京に慣れたか初夏の雨に濡れたか
          彩汀

レース鳩しづかに初夏の副都心
          すりいぴい

はつなつや折り鶴の青匂ひをり
          草夕感じ

はつなつの空がこはれたがつてゐる
          きさらぎ恋衣

何もかも売って初夏の風が痛い
          マレット

軽くって分厚い初夏の求人誌
          柚木みゆき

見本誌の香りは甘し初夏の風
          秘英知

R7.5.16
土へ木へみづへ遍し初夏の雨
          穂積天玲

水滴のサラダボウルに沿つて初夏
          かま猫

剥きたてのひかりや初夏のサインポール
          世良日守

はつなつや光の中の楽器店
          一港

蜂の腹はち切れさうな初夏となる
          天弓

湾内へ千の窓なる初夏の船
          三緒破小

船底のはじめて海に触るる初夏
          日永田陽光

渡船場の椅子は不揃ひ初夏の島
          霧賀内蔵

瞬膜を閉ぢはつ夏の眩しさへ
          七瀬ゆきこ

初夏や飛べない鳥のゐる不思議
          かねつき走流

この島に滅ぶ鳥たち初夏の風
          岬ぷるうと

初夏の鰭よじらせてアロワナ来
          はぐれ杤餅

ミャクミャクの目玉は六つ初夏の空
          ふくびきけん

浄髪や初夏の蛇口を分け合ひて
          常幸龍BCAD

『天』
復刊は初夏くろがねの栞買ふ
          葉村直

はつなつを豊かに蒼く空貝
          村瀬ふみや

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