『残菊』

 


『残菊』

R4.10.28

今宵より残菊と呼ぶ菊にみづ

          銀紙

残菊のつぼみにけふのみづあたふ

          砂楽梨

残菊を挿しし真水のうすみどり

          染井つぐみ

残菊や真水の影は未完成

          常幸龍BCAD

葉より傷みて残菊の濃く咲きぬ

          越智空子

残菊の下葉を毟るなななぬか

          サツマジェンヌ

残菊の翳り造花のごと硬し

          あずお玲子

残菊や聞こえぬ方の耳に風

          ようこう

レコードの古き匂ひや残る菊

          多事

残菊や本とレコード燃やしたり

          三水低オサム

残菊や瘡蓋めける昼の月

          横縞

鳥かごはからつぽ残菊土へ傾ぐ

          妹のりこ

残菊のぐんぐん光る水曜だ

          北野きのこ

残菊は揺れない一度決めたこと

          宇都宮駿介

岸へ寄する心地残菊束ぬれば

          みずな

R4.11.4

薄暮光残菊の黄を優しゅうす

          紗羅ささら

残菊や色を定めて散る力

          すりいぴい

一階は個人商店残る菊

          平良嘉列乙

残菊の庭や渋谷の裏通り

          鈴白菜実

東京は優しいですか残る菊

          錆田水遊

残菊が匂うな眼医者混んどるわ

          司啓

残菊よ職を選べる齢じゃない

          マレット

残菊や流しの低き母の家

          文月

母眠る残菊の香のさざ波に

          ひそか

母はいま雨滴となりぬ残り菊

          げばげば

残菊や母の忘れてゆく命

          笑笑うさぎ

残る菊母とはそれっきりでした

          冬のおこじょ

残菊の一片蝋涙の匂ひ

          一斤染乃

残菊や琵琶は直立して鳴れり

          郡山の白圭

残菊や水に解けば燻る墨

          穂積天玲

『天』

井戸水に地層のにほひ残り菊

          きのえのき

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