『灼く』

 


『灼く』

R5.7.21
波のごと灼けたアスファルトの隆起
          まあぶる
アスファルト灼けて揺るがぬ布教婦人
          由づる
自転車のぐにゃりと灼くる事故現場
          一走人
目撃情報募る看板灼けてゆく
          多々良海月
電柱の灼けて真新しい献花
          岩本夏柿
供華萎る禁止の文字の灼けてゐる
          板柿せっか
灼けて灼けてみづまで灼けてなまんだぶ
          おかまごはん
ロータリー灼けて面接最寄り駅
          梵庸子
受取つてもらへぬビラと灼けており
          中島容子
猿おらぬ猿山白く灼けており
          竹田むべ
砂丘灼く駱駝は半眼を濡らし
          七瀬ゆきこ
灼けており自販機の吐く六十円
          小野更紗
みな灼る喪主も遺影も挨拶も
          凡鑽
爆心の蛇口斜めに灼けており
          海峯企鵝
デブリ灼け永遠に穢れとなれる水
          郡山の白圭
石灼けてなにか産まれるかもしれん
          未茂季座
R5.7.28
シーソーの灼けて均衡しなふ影
          立ち漕ぎブランコじゅん
遊具灼く正午の空は青すぎる
          マレット
遊具みな灼けて子供のゐない国
          今野淳風
灼けたジャングルジムおかあちゃんまだ帰らない
          日土ぽぽんた
灼けているシートベルトのカチャのとこ
          ほそいすばる9才
外さうとしてヘッドホン灼けてゐる
          月岡方円
ヒーローのマスクの留め金の灼くる
          ギル
鯱鉾の尾の裏までも灼けてゐる
          三月兎
似ていないピカチュウ石材屋に灼けて
          佐藤儒艮
博士像コートの裾が灼けてます
          夏埜さゆり女
鎌倉の灼けた斜面を這う2t車
          ヒマラヤで平謝り
「外」ナンバー灼けてヒロシマ沈黙す
          まんぷく
灼くる風追ふや爆走のトゥクトゥク
          モデラート
ヘリポート灼けて平野に我が社屋
          片岡六子
延長やひりひり灼けてゆくチューバ
          にゃん
灼くるマウンド十五日のサイレン
          たけのこ
『天』
毎日を灼けし洗濯ばさみ爆ず
          木ぼこやしき

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