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『ゼリー』

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  R7.5.23 太陽のこうげきゼリーってむてき           かくれが 群青のゼリー傲慢な青空           あきののかなた ゼリーてふ流れぬ流体の光           岩のじ 溜息のやうなゼリーは固まらず           BEAT 固まるはゼリーが少し憂ふから           加納ざくろ 老成やゼリーは花を閉じ籠めて           ツナ好 失業やゼリーは型に流されて           伊予素数 チャラ男とは無縁硬めのコーヒーゼリー           小笹いのり ゼリーあるよさういふ関係でもないよ           木内龍 ゼリーゼリージゼルの役はなぜあの娘           かま猫 噛まず呑むゼリー散文的な喉           葉村直 入信を勧められたるゼリーかな           久森ぎんう フォーレ聴く夜のゼリーは波打つて           鹿本てん点 夜のゼリーより掘り起こす詩のあぶく           押見げばげば 新月に心臓あらばこのゼリー           凪太 地球史のごとゼリー固める時永し           さんぺきみほ R7.5.30 やや冷めて既にゼリーの息づかひ           元野おぺら 考えてゐる硬さしてゼリーある           二重格子 オレンジのゼリー正しき正義とは           ほろよい 不機嫌な色のゼリーの縁にみづ           稲見里香 その汁をゼリーの唄として愛す           爪太郎 ゼリーってきれい何にも興味なさそうで           家守らびすけ ゼリーから出られないので休みます           あなぐまはる 学食のトレーに傷やゼリー食ふ           藤色葉菜 自己採点終えてゼリーをまっぷたつ           イサク 人体は清き流体ゼリー食ぶ           めぐみの樹 ウイスキーグラスにゼリー盛る有給           佐藤レアレア 王様は裸ゼリーは掴めない           澤村DAZZA 人の世や涙のゼリーあらば食ふ           髙田祥聖 シークヮーサーゼリーが泣けてくる旅だ           にゃん 『天』 垂直の日射しゼリーの果実射る           上腕三頭筋

『初夏』

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  R7.5.9 はつなつの雲は芯からひかりだす           越智空子 りゆんりゆんと光るよ初夏の山彦は           にゃん ペダルかららん初夏の日暮れの始まりは           細井昴 初夏の風ほら桟橋に潜水艦           木染湧水 初夏や卵化石めくガスタンク           林廉子 初夏の午後板書のチョークレモン色           つまりの ふる里は開放弦の初夏の空           小川さゆみ 東京に慣れたか初夏の雨に濡れたか           彩汀 レース鳩しづかに初夏の副都心           すりいぴい はつなつや折り鶴の青匂ひをり           草夕感じ はつなつの空がこはれたがつてゐる           きさらぎ恋衣 何もかも売って初夏の風が痛い           マレット 軽くって分厚い初夏の求人誌           柚木みゆき 見本誌の香りは甘し初夏の風           秘英知 R7.5.16 土へ木へみづへ遍し初夏の雨           穂積天玲 水滴のサラダボウルに沿つて初夏           かま猫 剥きたてのひかりや初夏のサインポール           世良日守 はつなつや光の中の楽器店           一港 蜂の腹はち切れさうな初夏となる           天弓 湾内へ千の窓なる初夏の船           三緒破小 船底のはじめて海に触るる初夏           日永田陽光 渡船場の椅子は不揃ひ初夏の島           霧賀内蔵 瞬膜を閉ぢはつ夏の眩しさへ           七瀬ゆきこ 初夏や飛べない鳥のゐる不思議           かねつき走流 この島に滅ぶ鳥たち初夏の風           岬ぷるうと 初夏の鰭よじらせてアロワナ来           はぐれ杤餅 ミャクミャクの目玉は六つ初夏の空           ふくびきけん 浄髪や初夏の蛇口を分け合ひて           常幸龍BCAD 『天』 復刊は初夏くろがねの栞買ふ           葉村直 はつなつを豊かに蒼く空貝           村瀬ふみや

『フリージア』

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  R7.4.25 フリージア空を讃える歌として          湯屋ゆうや オカリナは涙のかたちフリージア          木染湧水 つぎつぎとかをりを灯せフリージア          郡山の白圭 不機嫌な自分が嫌いフリージア          彩汀 フリージアひかりは泣いた後のやう          眩む凡 フリージア涙は一筋がきれい          髙田祥聖 点滴のひやりとにほふフリージア          野野あのん 履歴書の余白も履歴フリージア          いしとせつこ くすくすと耳打ちのやうフリージア          飯村祐知子 美術部のバケツのままのフリージア          采女のぼたん フリージア香る二階の図工室          宇都宮駿介 フリージア明るし喜望峰のにほひ          沼野大統領 フリージア海は大きく濡れてゐる          理酔蓮 フリージア懐郷病めるほどとなり          爪太郎 寂しさの底は漏れ出すフリージア          岬ぷるうと フリージア供えまだあるか純情          庭のほたる草 R7.5.2 傘の柄に雨の震へやフリージア          稲畑とりこ フリージア今朝は甘酸つぱい鬱だ          いかちゃん さいはひはかたてにたりてフリージア          宮井そら 守られた約束はフリージアになる          葉村直 フリージアわたしの処方箋として          主藤充子 フリージア進路希望は天使です          嶋村らぴ フリージア振ればころころ鳴るわたし          桃園ユキチ カーテンは風の眷属フリージア          にゃん 風の傷あるらし夜のフリージア          中島紺 フリージア仔牛に死を教えぬまま          たーとるQ フリージア芳し伊豆の海青し          中岡秀次 フリージアの下に横浜雨の街          高原としなり フリージア父死んでより貧しき詩          伊藤映雪 空也の吐いてをるはフリージアであつたか          古賀 フリージア空也像には色がない          熊の谷のまさる 『天』 わたしにも光屈性フリージア          五味海秀魚

カタカナシリーズ『ツ』

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  R7.4.11 さくら咲くだけのフツウの町で好き           古瀬まさあき 死ぬ時ぐらいポツンとがいい囀れり           きつネつき 脳みそと同じ重さのキャベツ抱く           熊の谷のまさる 不妊治療辞める宣言キャベツ切る           三月兎 離婚成立避暑地の朝のツナサラダ           内田ゆの 遅刻だしアロハシャツだし手ぶらだし           いかちゃん プリッツの端まで塩や夏の空           公木正 チョコチップクッキーのカスが春こたつに付く           しいちゃん 昼食がミックスナッツ新社員           山羊座の千賀子 ポッキーのどろどろ愛の日の不倫           留辺蘂子 スツールに昭和のにほひ西日射す           大空晴子 恋猫の闇へとポップコーン撃つ           亀田荒太 行く夏を放つ深夜のダーツバー           はなぶさあきら ブーツの踵折れ愛の日は嫌い           小野更紗 毛皮商ツァーリのすゑと耳打ちを           伊藤恵美 巴旦杏咲くモーツァルトの浪費癖           ひそか ツィゴイネルワイゼン孑孑に空とぶこころ           イサク R7.4.18 春めきて水はバケツを出たがりぬ           すまいるそら ツチノコの空の明るむ野焼き跡           綾竹あんどれ 春愁のあくびミツユビナマケモノ           めろめろ リュウグウノツカイ鞣してゐる春月           一斤染乃 洗髪も石鹸ボツワナの春は           巴里乃嬬 アロハシャツの母の土産がアロハシャツ           常幸龍BCAD 異国めく京都牛カツには山葵           板柿せっか するめ齧るリッツカールトンの短夜           幸田梓弓 月光タワー集合亀鳴くを聴くツアー           ほろよい アルツハイマーの鯨は歌がすき           葉村直 ドッペルゲンガー春愁を餌として           赤尾双葉 扇風機うなづきレッド・ツェッペリン           宵嵐 イキルッテツラクテツマラナクテ独活           凪太 夏シャツの多幸症めく皺伸ばす           ギ...

『進級』

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  R7.3.28 進級す生徒三人兎二羽         つとむくん 賑やかな複式進級の初日         みっけのたかゆみ 進級やシーツのかをる保健室         誉茂子 進級のクラス分け知る保健室         紫水晶 進級の朝のひかりに傷みさう         島田雪灯 シャー芯一生分祖母の進級祝         たいらゆうじ 進級や家庭教師は六人目         小型犬 三階の造花ひしゃげている進級         澤村DAZZA 後輩へコーラ進級の日も寝ぐせ         一斤染乃 進級やラーメン奢らされてゐる         コンフィ 進級や先輩はもう東京か         花豆 進級す砂浜なんか走らねえ         巴里乃嬬 四年目の進級親不知が痛い         めろめろ あと二年齧る脛なし進級す         凡鑽 雀卓の内三人は進級す         池之端モルト 雀卓に知る進級は俺だけと         ふるてい 進級や雀荘で食ふナシゴレン         野野あのん R7.4.4 進級やオナカガイタイ月曜日         まあぶる 牛乳いらない進級したくない         ねあるこの5×5 進級の朝やオウムのハローハロー         門前の一草 五冊目の実習ノート進級す         馬越あずき 進級や教科書はあとがきがない         かねつき走流 美しき虹を描く進級の黒板へ         山羊座の千賀子 進級す黒板消しを叩けば雲         古賀 進級や輪郭の曖昧な雲         千夏乃ありあり 進級や昇降口の雨の唄         りぷさりす園芸店 進級の日は雨廊下の陽柔し         乃咲カヌレ 本校へ船で二時間進級す         宇都宮駿介 シアトル便のチケット進級はしない         ひでやん 全員を進級させてギムレット         鈴木麗門 バッハのフーガ進級の甘い鬱         茶々琴子 進級を選ばず俺は樹と語る         慈雲奏荘 『天』 請け戻す画材一式進級す         川端こうせゐ

『凍解』

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  『凍解』 R7.3.14 凍解の空みづいろに漲りぬ           石塚彩楓 まだ清廉なかたち凍解の空           きのえのき 凍解へ防風林は根を晒し           北野きのこ 凍解やぎうぎうみづを欲する根           青海也緒 凍解の二歩目はつかに沈みをり           彼方ひらく 凍解や染物さらす小川の香           はなぶさあきら 凍解や古びる橋のトリアージ           つきのしゅか 鉄橋は樹海の出口凍てゆるむ           常幸龍BCAD 里は凍解け山はまだ燃えてゐる           佐藤茂之 野のうらをぬらしゆく凍解のみづ           ギル 重力に沿ふ凍解のみづきれい           広島じょーかーず 凍解やこころがとけてこゑになる           古賀 凍解や怒りは捨てたはずだつた           けーい〇 いてどけやさびしいうそもホシになる           丸山美樹 凍解やあいつは海になりました           広島華水樹 凍解や友喪いて何が春か           平山仄海 凍解を逝くなにひとつ悲しませず           七瀬ゆきこ R7.3.21 凍解のどれも明るき泥の靴           ナノコタス チワワ爆走凍解のドッグラン           花豆 凍解やしやがれごゑめく土の香は           仁和田永 凍解の光とセダム植ゑて待つ           りぷさりす園芸店 凍解や花の切手の110円           三緒破小 凍解や切手の驢馬の眠さうな           眩む凡 生臭きゴリラの欠伸凍解す           世良日守 恐竜の欠伸臭する凍解だ           司啓 農神のあくび津軽の凍てゆるむ           巴里乃嬬 凍解や平らかな祝詞のこきふ           常盤はぜ 凍解いま蝦夷の尾鰭の付け根まで           元野おぺら 警笛の尾は柔らかし凍てゆるむ           森毬子 凍解けや卵殻膜のあえかなる           コンフィ アルカイクスマイル凍解と訳す            髙田祥聖 『天』 凍解や千歳と名付けたき原野           かねつき走流

『干鱈』

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  R7.2.28 干鱈嚙む憂鬱に似た海のいろ           碧西里 干鱈噛む海風強き村の端           栗田すずさん 順調に老いゆく指や干鱈割く           ばばばあちゃん 投稿のラジオ干鱈を焼く手止め           おこそとの くちびるのけがにひだらがしよつぱすぎ           ひびきX 風吹いて干鱈の揺れて金なくて           岡田きなこ 生きるには少しの野心干鱈噛む           窪田ゆふ 求職や干鱈を噛んで味のする           二重格子 配給は干鱈毎日ひだらと母           高原としなり 家系譜に載らぬ曾祖母干鱈噛む           七瀬ゆきこ 樺太に祖父の系譜や干鱈さく           はぐれ杤餅 能登を風しほのつぶ立つ干鱈かな           トウ甘藻 マッコリは月の甘みや干鱈裂く           久森ぎんう 干鱈掬うスープの底の祖国かな           沢胡桃 干鱈割くつひに日本を出ぬ人生           木ぼこやしき R7.3.7 塩を抜く干鱈の誇り折らぬやう           庭の蛍草 百本の干鱈の堤がる暗き蔵           富士山 干鱈焼く火は外海の吠える音           森毬子 干し鱈や若狭の寺に人多し           清水縞午 干鱈来る山には山の祝事           中島紺の子 棒鱈を戻す再婚てふ縁           川端こうせゐ 縁は切りたし干鱈は塩の抜け難し           凡鑽 鬱王と名付けて干鱈叩き割る           伊藤映雪 顔のない干鱈と顔のある干鱈           柊琴乃 干鱈てふ全裸より裸な覚悟           赤目作 干鱈噛む承認欲求はくさい           公木正 干鱈裂く吾に由一の画才なし           沼野大統領 干鱈毟る啄木の詩は生臭い           樹海ソース 生き恥は鹹し干鱈を湯にもどす           押見げばげば 『天』 干鱈打つ海風干鱈より重し           夏椿咲く 酒に干鱈 あゝ 嚙み合わぬ結婚観           イサク