『立冬』
R7.11.7
立冬の空がそらぞらしくて起きた
田邊辺
立冬や若きセロリを縦に割く
丘ななみ
逆撫です鱗に塩を引く立冬
あが野みなも
立冬の油ごと飲む麻辣湯
亘航希
脱嚢や立冬の陽をありつたけ
かねつき走流
立冬や日に百キロの象の餌
花散里
立冬の鳥の心音ととととと
綾竹あんどれ
立冬の輪郭線を描く小雨
あきののかなた
立冬の真つ只中へ雨粗し
そまり
立冬の夜や木芯燃える音
辰巳電柱
坐薬入れる立冬の弾薬として
ギル
父は今立冬のいろ抗がん剤
広島じょーかーず
立冬や粥一匙の力持て
笑笑うさぎ
立冬や祈りに磨耗せし撞木
常幸龍BCAD
立冬を正しくゆらぐ仏間の火
イサク
立冬や夕日の色にかぶれさう
ひそか
R7.11.14
ペン先に小さき穴あり冬に入る
日永田陽光
冬立ちぬ白衣にボールペンの線
ツナ好
立冬やみづの明るさで笑ふ
古瀬まさあき
雲梯に垂るる冬立つまで垂るる
広島華水樹
剥げかかるセンターライン冬に入る
亀田荒太
立冬の岬バイクに残る熱
あまえび
冬に入るみづの柩として海は
伊藤映雪
何もない町やさぐれて冬に入る
丁鼻トゥエルブ
ジオラマに倒れた紳士今朝の冬
仁和田永
ラジオより時報四秒冬に入る
高尾一叶
冬来る硝子の繭を砕き出て
元野おぺら
『天』
しゅっと抜き取る光立冬のティッシュ
飯村祐知子
立冬の空の青さの心因性
広瀬康
教え・・・季語の近さとは(R7.11.13 一句一遊 虎の巻にて)
立冬やチンしてる間に冷める皿 / 一人男
〇冷たさのイメージが季語と近いと指摘されてしまう。
立冬へ湖の水面の硬さかな / 聞岳
〇直接的に冷たいという情報は入れていない分、季語との近さは緩和されている。
立冬や天気を分けるトンネルよ / えいそふと
〇自分の経験の中のきっぱり感と、季語の今日から立冬というきっぱり感の接点が、取り合わせとしてわかりやすく近いと指摘されてしまう。
立冬や赤提灯に吸い込まれ / 岡山のホルモンうどん
〇寒くなってきたからお酒が恋しい。(だから)居酒屋へ行く。と、季語との近さ(因果)が見えてしまう。
子ども百科事典処分して立冬 / 西条ユーホ吹き
〇今日から立冬というきっぱり感と、物を処分して自分の人生から切り離すきっぱり感の取り合わせ。立冬→何かを分ける→処分する→子ども百科事典と連想のクッションを置いている分、季語との近さが緩和される。
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