『蝗』

 

R7.9.26
組み立てて蝗のパーツおよそ千
          千夏乃ありあり

後脚の六角レンチめく蝗
          オキザリス

ガスマスクめく蝗の顔の向かい来る
          小笹いのり

蝗とぶつかるどっちも謝らない
          八幡浜うさの

跳びあがる蝗は蝗の肩蹴つて
          樋口滑瓢

位牌買ふ一升瓶の蝗にて
          佐藤茂之

びやうびやうと蝗は風を嚙砕き
          常幸龍BCAD

しりしりと日蝕満ちて葉に蝗
          坐花酔月

兵糧は尽きて蝗の目の疼き
          うめやえのきだけ

蝗嚙む寂しき一城の主
          髙田祥聖

皇帝の子孫蝗に喉仏
          トウ甘藻

亡国や蝗の腹を食ふ蝗
          樫の木

雨をラオ蝗の太き後ろ足
          石川穴空

報道の煽る聖戦蝗飛ぶ
          亀田荒太

いなごいなごヒトは滅びたがつてゐる
          あいだほ

R7.10.3
すぐそこへ蝗面倒さうに散る
          木ぼこやしき

つるむ蝗同じ角度に見上げをり
          たかみたかみ

許し乞ふごとき蝗の交尾かな
          凪太

火の中に敢ふるがごとく蝗跳ぬ
          玉家屋

蝗五十キロびきびき動く袋かな
          ナノコタス

畔に熾す蝗百頭葬る火
          山本先生

笊に残る蝗の足の五六本
          深山むらさき

蝗炒る祖母恍惚と笑みたりき
          いかちゃん

蝗炒る飴色までの微熱かな
          笑笑うさぎ

からからのいなご火の穂の貌をして
          押見げばげば

蝗煮てジャム煮て信濃住み慣れて
          甘えび

蝗喰ふ信濃は遠く清らなり
          なしむらなし

故郷に蝗はいない墓もない
          かぜのはな

太陽赤々旗日を千の蝗飛ぶ
          古瀬まさあき

『天』
蝗ゐて乾きて蒙古遠征日
          無敵なおき

手のひらはまづしきうつわ蝗蹴る
          にゃん

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