『鯊』

 

『鯊』
R6.9.27
鯊の目の昏き隆起や波を待つ
          常幸龍BCAD

砂煙らせて砂色の鯊動く
          山口花見月

砂喰つて砂吐く鯊の無表情
          宇都宮駿介

鯊百尾開く小出刃の無言かな
          日永田陽光

鯊焼くやにはかの雨のかぐはしき
          林廉子

月末の汁かけ汁や鯊煮える
          そも

鯊煮るや故郷の味噌は甘すぎて
          西野誓光

鯊食えよ仕事選ってる場合かよ
          一斤染乃

跡取りの兄の出奔鯊を割く
          碧西里

底辺を生きてしみじみ鯊づくし
          たいらんど風人

東京湾に鯊やスイカをチャージして
          里山子

人口島犇く湾や鯊跳ぬる
          藤色葉菜

鯊飛ぶやテトラポットがデカ過ぎる
          世良日守

鯊の目やジャンボジェットのどてっぱら
          佐藤儒艮

上皇様の御手にあをあを鯊の鰭
          三月兎

上皇の白衣麗し鯊清し
          冬島直

上皇の在す日本は鯊の国
          中岡秀次

R6.10.4
自転車を放りだす浜鯊日和
          ひらもとかおる

突堤に座せば隣人鯊日和
          松山もも

釣り糸は光だまりへ鯊の潮
          ツナ好

針外す間や鯊のひと睨み
          めろめろ

針を取る握力鯊を歪ませる
          広島華水樹

手の中の泣いた気がした鯊ぬくく
          中村すじこ

釣り人のかたへに鯊の干からびる
          仁和田永

突堤の染みは踏まれた鯊である
          理酔蓮

辞め時を考えながら鯊を釣る
          彷徨ういろは

数学は赤点鯊は釣れ過ぎる
          ふくびきけん

鯊憎し妻と来たればほぼ釣れず
          山本先生

妻に似た鯊放る他は持ち帰る
          ギル

鯊釣や釣果といふに恥ずかしく
          青木りんどう

暮色かな鯊も単身なる父も
          桜鯛みわ

『天』
唇の針より裏返りさうに鯊
          もりさわ

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