『残る虫』
『残る虫』
R5.10.13
米櫃に斜めの升や残る虫
葉村直
冷蔵庫の奥に味噌漬け残る虫
門前の一草
残る虫不法投棄の冷蔵庫
人日子
残る虫取壊し待つ若葉荘
中島容子
植物となりたる空家残る虫
井上さち
残る虫留め石に巻く棕櫚の縄
杏乃みずな
すり減りし仁王の膝や残る虫
樫の木
残る虫ケレタロ支店長拝命
くま鶉
残る虫ぼうと航空障害灯
詠頃
残る虫空煌々と製鉄所
灰色狼
残る虫火の粉鉄の粉工場の子
潮汐子
残る虫洗ふ工場と縫ふ工場
宵嵐
水に灯の等間隔や残る虫
佐藤レアレア
残る虫河岸の吐き出す水昏し
古瀬まさあき
夜の甍色の音色や残る虫
穂積天玲
残る虫公会堂は星の下
七色しぐれ
星々の聲と思えば残る虫
夏椿咲く
残る虫星夜は防腐処理されて
元野おぺら
R5.10.20
残る虫回送のバス二台過ぎ
三水低オサム
残る虫三階の灯は早く点く
稲畑とりこ
残る虫チラシの箱を三百個
加納ざくろ
廃刊の夕刊薄し残る虫
札幌のとべちゃん
残る虫派遣社員と喫煙所
白壁牛蛙
吸殻のあふるるバケツ残る虫
露草うづら
残る虫子は仕事には行ってない
花節湖
立ち飲みのお代は缶へ残る虫
小野更紗
前日の手術中止やすがる虫
青居舞
手術着のアイロン固し残る虫
うめやえのきだけ
実印は静かに重し残る虫
仁和田永
耳鳴りの耳の形や残る虫
きとうじん
寂しさの単位はりりり残る虫
古賀
残る虫夜は日毎に硬くなる
彼方ひらく
残る虫塔の崩落見届けよ
青田奈央
『天』
残る虫父の記憶の芯に母
谷山みつこ
残る虫寂しき耳をあずけませう
にゃん
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