『やませ』

 


『やませ』
R5.5.26
ツンとした朝がやませに結露する
          正念亭若知古

やませ吹くとまらぬ耳のうおんうおん
          笑姫天臼

あら汁は熱しやませの寄合所
          トポル

農協で借りた百万やませ来る
          まんぷく

米粒の哀しき細さ夜のやませ
          板柿せっか

過去帳に飢饉の記録やませ風
          にゃん

霊場に硫黄の匂いやませ来る
          浦野紗知

食べる寝るオロオロ歩くやませ吹く
          妹のりこ

塩辛き三陸の土やませ吹く
          洒落神戸

やませ吹き捲く三陸遺構校舎
          一久恵

やませ来る防潮堤とふしづかな碑
          はぐれ杤餅

やませ吹く二階はかつて蚕部屋
          夏湖乃

きいきいとこけしの首の鳴くやませ
          清水縞午

やませやませ棚にこけしのささめごと
          梵庸子

やませの尾だつたか喉を掠めしは
          ひそか

やませふくいちばんぼしのしらじらし
          坐花酔月

味噌溶く香今夜やませは吹き続く
          東京堕天使

R5.6.2
やませ吹く潰れた骨の痛む夜
          日土野だんご虫

腰疼く明日のやませは濃いだらう
          さだとしぞう

やませ来る岩は山鳩色に病み
          常幸龍BCAD

まじまじとやませ受く羊の真顔
          麦のパパ

やませ吹く塵ばむ猫のおおふぐり
          金井登子

野田牛(べこ)のふぐりに砂(いさご)やませ来る
          伊藤映雪

やませ吹く馬のまえあしうしろあし
          古瀬たえこ

やませ負ふ馬のあばら骨の上下
          古瀬まさあき

やすりめくやませに向ける馬の尻
          伊藤柚良

やませ吹きどぅるんと馬の胴震い
          川越羽流

山姥のへその緒赫しやませ熟む
          緑の手

鬼はまた神様だつたやませ吹く
          駒水一生

即身仏へ乾び切つたるやませかな
          水野大雅

やませ吹くにはかに匂ふ獣あり
          井納蒼求

棚田割く断層やませ吹く夜を
          Rx

鵜ノ巣断崖撫で上げ山瀬吹き募る
          津島野イリス

『天』
地に生くるものみな屠らんとやませ
          伊藤恵美

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