RNB『夏井いつきの一句一遊』佳句鑑賞（聞き書き）

  『卒業証書』 R5.3.17 穂先さす卒業証書の一画目 　　　　　　　　　　たかやん 卒業証書この右跳ねは佐伯女師 　　　　　　　　　　上腕三頭筋 名を入れて卒業証書重くなる 　　　　　　　　　　多々良海月 卒業証書受く校長に整髪料 　　　　　　　　　　三津浜わたる 名前負けばっか卒業証書って 　　　　　　　　　　結壱隆月 卒業証書俺は以下同文じゃない 　　　　　　　　　　理酔 以下同文的な三年卒業証書 　　　　　　　　　　大黒とむとむ 卒業証書以下同文じゃない明日 　　　　　　　　　　あいむ李景 店長に見せる卒業証書かな 　　　　　　　　　　板柿せっか ファミレスへ卒業証書手に四人 　　　　　　　　　　つきのしゅか 駅前のタコ八卒業証書割 　　　　　　　　　　三水低オサム 四男の卒業証書だけがない 　　　　　　　　　　ギル 卒業証書出せば静電気のにおい 　　　　　　　　　　凪太 散らかつた心卒業証書白い 　　　　　　　　　　綾竹あんどれ ドで終わる校歌卒業証書は白 　　　　　　　　　　本田むらさき 卒業証書ふるさとは水のうた 　　　　　　　　　　おおふみはないえ 卒業証書みづのふるへているこゝろ 　　　　　　　　　　モッツアレラえのくし 卒業証書いつもの海に見せてやる 　　　　　　　　　　音羽凛 黙祷の椅子に卒業証書置く 　　　　　　　　　　松井くろ R5.3.24 手に硬し卒業証書てふ光 　　　　　　　　　　ひそか 卒業証書くるんのるんを笑ひ合ふ 　　　　　　　　　　駒村タクト 卒業証書ぽんと祝砲鳴らす筒 　　　　　　　　　　古賀 空へきゅぽんきゅぽん卒業証書の筒 　　　　　　　　　　秋白ネリネ 卒業証書点字器賑やかなる夕べ 　　　　　　　　　　Ｒx 卒業証書受く登校は六十日 　　　　　　　　　　青居舞 卒業証書あざやかに立つチョゴリ 　　　　　　　　　　七瀬ゆきこ 卒業証書渡せドラフト一位だぞ 　　　　　　　　　　佐藤茂之 カラオケに卒業証書忘れけり 　　　　　　　　　　露草うづら ジャンカラに卒業証書置いてくる 　　　　　　　　　　山本真也 パチンコ屋へ卒業証書持つたまま 　　　　　　　　　　たかみたかみ 遺失物係に卒業証書また 　　　　　　　　　　飯村祐知子 卒業証書と屋上の灰皿と 　　　　　　　　　　千鳥城 吠えすぎの犬よ卒業証書くらえ 　　　　　　

  　　漢字シリーズ『潮』 　　R5.3.3 　　新潮の清らなフォント冴返る 　　　　　　　　　　　　藤白真語 　　潮の音校舎のぶらんこのみ揺れて 　　　　　　　　　　　　まるかじり 　　石鹸玉風の潮目をなぞりゆく 　　　　　　　　　　　　俳句ファイヤー立志 　　潮騒のやうな耳鳴り養花天 　　　　　　　　　　　　ぞんぬ 　　メガホンの声にたぢろぐ潮干狩り 　　　　　　　　　　　　義心一道 　　潮干狩り砂かけばみづかけばみづ 　　　　　　　　　　　　越智空子 　　観潮や不惑無職の肩軽し 　　　　　　　　　　　　青海也緒 　　逆鱗に触れ観潮船の吠えてゐる 　　　　　　　　　　　　稲穂 　　渦潮てふ水の結び目がうがうと 　　　　　　　　　　　　常幸龍BCAD 　　遠泳の潮に埋もれる人へ声 　　　　　　　　　　　　二重格子 　　甲板に立てる自転車夏の潮 　　　　　　　　　　　　露草うずら 　　朝潮太郎転がつてゐる夏休み 　　　　　　　　　　　　イサク 　　抱擁の内に赤潮臭ひ出す 　　　　　　　　　　　　長谷川水素 　　潮騒や春の湿気の濃く甘く 　　　　　　　　　　　　マレット 　　観潮や春が溜まりに溜まっとる 　　　　　　　　　　　　たーとるQ 　　R5.3.10 　　潮汁春の良きこと二つ三つ 　　　　　　　　　　　　はたさらさ 　　この目玉無敵ぞ春の潮汁 　　　　　　　　　　　　とよさん 　　ふやけゆく内耳に春や潮汁 　　　　　　　　　　　　加座みつほ 　　ラムネぐびぐび乾いた血潮驚かす 　　　　　　　　　　　　西村棗 　　潮の匂いしないね冬の椅子ぎんいろ 　　　　　　　　　　　　ツナ好 　　潮合のはるか遅日の貯木場 　　　　　　　　　　　　葉村直 　　潮焼や浜に朽ちたる冷蔵庫 　　　　　　　　　　　　犬山裕之 　　恋猫の最高潮を待ち構ふ 　　　　　　　　　　　　山本先生 　　千人のピチカートめく望潮 　　　　　　　　　　　　にたいも 　　望潮吾より影を驚きぬ 　　　　　　　　　　　　もりさわ 　　望潮の右手太陽眩しいか 　　　　　　　　　　　　板柿せっか 　　引き揚げの港ひしめく望潮 　　　　　　　　　　　　はぐれ杤餅 　　望潮ぶくぶく戦争を空耳 　　　　　　　　　　　　ありあり 　　飛花落花潮の満ち引くごとく鬱 　　　　　　　　　　　　24516 　　春潮やひかりのな