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『苗床』

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  『苗床』 R6.3.15 苗床に篩さらさら土注ぐ           どいつ薔芭 苗床に素直な土を入れにけり           那須のお漬物 苗床のよろこび触るる指の腹           郡山の白圭 湯気のぼる苗床あまき土にほふ           はぐれ杤餅 苗床の土は甘いと父の言ふ           紗羅ささら 苗床へ汲み置きの水甘からん           松田てぃ 苗床へ甘味のやうな水をやる           岩のじ 清潔な苗床水を甘やかす           千夏乃ありあり 苗床に甘えて今日はよく休む           里山子 苗床に如露(じょろ)で挨拶して回る           梨山碧 雨よりもやさしき雨を苗床へ           常盤はぜ 小糠雨苗床を祝ぐ歌なりや           イサク 龍神の水たつぷりと苗床へ           アロイジオ 苗床や我は優しき神たらん           桃園ユキチ B組の苗床よりもいい場所へ           東京堕天使 苗床納品職員室がらん           暖井むゆき 苗床を作る授業や羊鳴く           打楽器 苗床やわたしに少し嫌光性           冬のおこじょ 苗床きらきら社会不適合者とは           銀紙 R6.3.22 苗床の土ひと肌にほぐしけり           藤色葉菜 苗床や礼なすやうに土を切る           長谷川水素 招かざる芽ものびやかよ苗障子           あいむ李景 苗床と呼ぶには美しき不揃ひ           七瀬ゆきこ 苗床の一緒に育つ違ふ草           めろめろ 苗床を踏んだらいかんゆうて踏む           ひでやん 苗床の内に目星を付けてゐる           三雄破小 苗床の角の一本良く伸びる           日土野だんご虫 苗床のぺんぺん草のばかやらう           凡鑽 ベランダの苗床空は明るくて           小型犬 苗床や呪文のやうに記す学名           寺尾当卯 苗床の下を電熱線の河           オキザリス 店裏に廻りて広き苗圃かな           山内彩月 苗床や素直な雨の終日(ひもすがら)           ひそか 『天』 にはたづみとは苗床の凹み

『獣交む』

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  『獣交む』 R6.3.1 獣交む微かに唸る電気柵           山田はち 獣交む種芋五キロ注文す           花豆 獣交みてタクシーは来なくて           北村崇雄 獣交むなんてまあるい雲だらう           門前の一草 雲の凹凸や獣の交みけり           音羽凛 獣交む墓仕舞ふ日の日の匂ひ           南亭骨太 獣交む太陽も死ぬんだって           三隅涙 朱を帯し生ぬるき月獣交む           田村こあら 獣交む咬傷は暁の色           仁和田永 夕雲ははらわたのいろ獣交む           押見げばげば 獣交む花弁の如き舌を垂れ           葉村直 千里来て知らぬパンダと交ませる           石井一草 人類は滅びたやうだ獣交む           冬島直 宗教画のやうに野犬の交みをり           ギル R6.3.8 獣交む静脈あをき犬の腹           ひでやん 決闘は止めじゃ獣ん交みよる           丁鼻トゥエルブ 獣交むふるふるふると尾を揺らし           彩汀 獣交む豊かなる尾の収まらぬ           黒子 濁り視る眼をして交みたる獣           澤村DAZZA 獣交む尻やまばたきなき眼           みいみ 獣交む声なき声とある声と           梅鶏 こゑ発火しさうに獣交みたり           一斤染乃 獣交む影も交んでおりにけり           嶋村らぴ 獣交めばおうおうと匂ふ土           小野更紗 竪琴はひかりに獣交みけり           広瀬康 獣交む空美しき島の午後           そまり 獣交むアンリ・ルソーの羊歯の闇           中型犬 荒垣の赤きカンバス獣交む           満生あをね むらさきの野に種馬の脚赤し           伊藤映雪 獣交む関東ローム層の夜           飯村祐知子 『天』 犬交むハイライト喫む家の前           生田久孫子 獣交みをりけり釈迦よ寝返るな           いかちゃん