RNB『夏井いつきの一句一遊』佳句鑑賞（聞き書き）

  漢字シリーズ『好』   R4.9.16 秋薔薇の門あの犬が好敵手 　　　　　　　　　　けーい〇 好きな色聞かれてカンナ指差しぬ 　　　　　　　　　　海峯企鵝 好戦的な形のバナナから食べる 　　　　　　　　　　吉行直人 教室に好戦的な蠅がゐる 　　　　　　　　　　ぞんぬ 二番目に好きを仕事にして夜なべ 　　　　　　　　　　山本先生 星を見る同好会のある夜学 　　　　　　　　　　柳児 啄木鳥の好打やペグを抜く真昼 　　　　　　　　　　さくさく作物 ブルーベリーをキラキラさせる水が好き 　　　　　　　　　　おおふみはないえ 白百合は怒り不格好に割ける 　　　　　　　　　　三尺玉子 手の平にパプリカ心臓みたい好き 　　　　　　　　　　あや 好色な南瓜は並べて煮崩れす 　　　　　　　　　　トポル お好み焼きの烏賊が真っ白くて秋思 　　　　　　　　　　門前の一草 竹の春好きな家事だけし終えて居 　　　　　　　　　　三緒破小 秋晴るる好きでなかつた実家 ( いえ ) 壊す 　　　　　　　　　　猫宮瓜 R4.9.23 爽やかに你好の旗振り立てる 　　　　　　　　　　凪太 好吃の声肉汁と混ぜる夏 　　　　　　　　　　宇野翔月 好吃と蟇の丸焼き勧めらる 　　　　　　　　　　碧西里 好吃とぼそり北京の冬温し 　　　　　　　　　　庄野酢飯 李先生ただ好 ( ハオ ) とのみ菊の酒 　　　　　　　　　　長谷川水素 檸檬忌のレジに三人目の三好 　　　　　　　　　　錆田水遊 三好忌の青唐辛子濡れてゐる 　　　　　　　　　　みずな 好きなふりやめる唐辛子は辛い 　　　　　　　　　　木染湧水 下書きの好きと清書のような月 　　　　　　　　　　さとけん 初雪がきれい好きってなんだっけ 　　　　　　　　　　いかちゃん 雪きれい友達として好きだとは 　　　　　　　　　　広木登一 雪深く深くアランの声が好き 　　　　　　　　　　渋谷晶 好々爺の目玉てらてら猿酒 　　　　　　　　　　一斤染乃 スピーカー果てて踊りの好き勝手 　　　　　　　　　　大和田美信 『天』 好きと

『山椒の実』 R4.9.2 山鳩眠り山椒の実の円ら 　　　　　　　　　　綾竹あんどれ 笊はまだ青雲の香や山椒の実 　　　　　　　　　　メレンゲたこ焼き　 山椒の実ひしひし水は痛からう 　　　　　　　　　　はんばぁぐ 猛き目の鶏いる庭や山椒の実 　　　　　　　　　　風早みつほ 本家とか分家とか山椒の実とか 　　　　　　　　　　富山の露玉 山椒の実赤し生家はがらんだう 　　　　　　　　　　広木登一 実山椒かじりお悔み欄に線 　　　　　　　　　　まがりしっぽ 山椒の実かじる内定取れぬ夜 　　　　　　　　　　蜜流 ぬけぬけと受け子の来たり山椒の実 　　　　　　　　　　大黒とむとむ 山椒の実怒りに火照る夜もある 　　　　　　　　　　藍月 山椒の実墓穴を掘った手が痒い 　　　　　　　　　　閑々鶏 はじかみや熟れた子供は良い子供 　　　　　　　　　　七瀬ゆきこ 山椒の実詩とは明るき傷のこと 　　　　　　　　　　常幸龍 BCAD 実山椒は怒った蜜柑みたいな香 　　　　　　　　　　いかちゃん R4.9.9 からさうな雨滴がひとつ山椒の実 　　　　　　　　　　凡鑽 まろきとは身を守ること実山椒 　　　　　　　　　　かま猫 山椒の実火とは生まれるとき無音 　　　　　　　　　　澤村 DAZZA 実山椒爆ぜて紫紺の火の匂ひ 　　　　　　　　　　村瀬っち 実山椒ひりひり鍋は磨かれて 　　　　　　　　　　小野睦 潰されし山椒の実に軽き皺 　　　　　　　　　　水野結雅 山椒の実噛んで人間らしい顔 　　　　　　　　　　露草うづら 取立てて子細あらねど山椒の実 　　　　　　　　　　麦仙人 山椒の実もの好きありて縁づきぬ 　　　　　　　　　　ぴん童子 山椒の実熟れて産褥期の痛み 　　　　　　　　　　いさな歌鈴 実山椒夜半にぬるめの桂枝湯 　　　　　　　　　　朔ら望 山椒の実弾け耳石は剥がれさう 　　　　　　　　　　冬のおこじょ 実山椒顎探れば髭あらし 　　　　　　　　　　水野大雅 『天』 すり鉢の傾斜を戻る山椒の実 　　　　　　　　　　夏椿咲く 山椒の実あしたの軍鶏を